慢性腎臓病に対しての特効薬はないため長期に渡り管理していかなければなりません。特にeGFR(推算糸球体濾過量)が30未満の方は今後の経過や治療について理解していかなければなりません。腎代替療法の開始を一日でも先に伸ばすことが出来るよう医師だけでなく他の医療スタッフとともにしっかりとサポートして参ります。
慢性腎不全により、末期腎不全にいたった場合は回復の可能性がなく、尿毒症や高カリウム血症(不整脈・心臓が止まる事もある)・心不全などの重大な問題を起こすので、透析や移植をする以外に方法がありません。
末期腎不全に対する治療は腎臓の機能のうち、水・電解質及び老廃物を除去する手段である「透析療法」と腎臓の機能をほぼすべて肩代わりする「腎臓移植」の2通りがあります。
これらのうち、自分の最も合った(医学的条件だけでなく、ライフスタイルや年齢、性格なども考慮して)治療法を選ぶ必要があります。
しかし、どれが自分に最も適しているか、わからないことも多いと思います。医師からの説明だけでは納得が十分できないかもしれません。
また、これらの治療法は相反するものではありません。最初は腹膜透析(PD)を開始し、その後に血液透析(HD)に移行したり、その逆もありえます。また、PDとHDの併用療法という方法をPDまたはHDへの移行の橋渡しとして使う事も可能です。
さらに、どの透析形態からも移植を行う事はできますし、移植後に腎機能が低下した場合、どの透析形態へも移行が可能です。
血液透析 | 腹膜透析 | 腎移植 | |
腎機能 | 悪いまま(貧血・骨代謝異常・アミロイド沈着・動脈硬化・低栄養などの問題は十分な解決ができない) | かなり正常に近い | |
必要な薬剤 | 慢性腎不全の諸問題に対する薬剤 (貧血・骨代謝異常・高血圧など) | 免疫抑制薬とその副作用に対する薬剤 | |
生命予後 | 移植に比べ悪い | 優れている | |
心筋梗塞・ 心不全脳梗塞の合併 | 多い | 透析に比べ少ない | |
生活の質 | 移植に比べ悪い | 優れている | |
生活の制約 | 多い (週3回、1回4時間程度の通院治療) | やや多い (透析液交換・装置のセットアップの 手間) | ほとんど無い |
社会復帰率 | 低い | 高い | |
食事・飲水の制限 | 多い(蛋白・水・塩分・カリウム・リン) | やや多い(水・塩分・リン) | 少ない |
手術の内容 | バスキュラーアクセス(シャント) (小手術・局所麻酔) | 腹膜透析カテーテル挿入 (中規模手術) | 腎移植術 (大規模手術・全身麻酔) |
通院回数 | 週に3回 | 月に1〜2回程度 | 移植後1年以降は 月に1回 |
旅行・出張 | 制限あり(通院透析施設の確保) | 制限あり(透析液・装置の準備) | 自由 |
スポーツ | 自由 | 腹圧がかからないように | 移植部保護以外自由 |
妊娠・出産 | 困難を伴う | 困難を伴う | 腎機能良好なら可能 |
感染の注意 | 必要 | やや必要 | 重要 |
入浴 | 透析後はシャワーが望ましい | 腹膜カテーテルの 保護必要 | 問題無い |
その他の メリット | 医学的ケアが常に提供される。最も日本で実績のある治療方法 | 血液透析に比べて 自由度が高い | 透析による束縛からの精神的・肉体的解放 |
その他の デメリット | バスキュラーアクセスの問題(閉塞・感染・出血・穿刺痛・ブラッドアクセス作成困難) 除水による血圧低下 | 腹部症状(腹が張る等)カテーテル感染・異常、腹膜炎の可能性、蛋白の透析液への喪失、腹膜の透析膜としての寿命がある(10年位) | 免疫抑制薬の副作用 拒絶反応などによる腎機能障害・透析再導入の可能性 移植腎喪失への不安 |
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